『サピエンス異変』を読んで〈第2部〉
それでは、
第2部 紀元前三万年~西暦1700年
第3章 人類は「定住」に適応していない?
第4章 家畜は何を運んできたのか?
第5章 古代ギリシャ・ローマ人の警告
に入りたいと思います。
(最初から読みたい方はこちらから)
とにかくショッキングな内容が多い章です。
(喜ぶべきは、虫歯は私だけの問題ではないということか?)
著作権の関係で写真やイラストを掲載することができなく、またすこし長いので読むのがたいへんかもしれませんが、
第2部で扱う期間は、紀元前三万年~西暦1700年です。
第1部(紀元前八〇〇万年~紀元前三万年)と比べれば短いものの、それでもよくわからないですよね。もちろん私はさっぱりでした。
三万年前というのは、だいたい人類が定住生活(農耕)をはじめたとされる時期だそうです。
本書がヒトの誕生(八00万年前)から始まっていますので、そう考えると本当に最近のことのように感じますよね。
たぶん三万年前から二万五千年前のある瞬間、どこかの誰かが、ここに水があり、食べ物や住まいの材料も豊富にそろっているのだから、もうこれ以上移動する理由はない、と決めたのだ。
(中略)
農耕が定住の結果だったのか、あるいは定住が農耕の避けようとして避けられない副産物だったのかを知る人は誰一人いない。page64
なんだかわからないけど、このあたりで(三万年前ぐらいに)農耕をはじめたということらしいです。
きっと農業の方が動物を追うよりも楽で、しかも食物を増やしたり蓄えたりすることができるから便利っ!そこにやっと人類が気づいたー笑!
なんて想像してしまいそうですが、実際はそんなことではなかったような気がします。
だって実家が田舎にある人はわかると思いますが、農業って中途半端じゃできないんですよね。
毎日水をあげなければ枯れるし、日照りや、害虫、害獣など、気にかけなきゃいけないことが山のようにあります。
これまで木の実を拾って食べたり昆虫食べたり動物を追いかけまわしてたヒトが、おっ!それ便利じゃん!なんてかんたんに始められるようなことではないわけです。
それでは、なぜ人類は農業をはじめたのか。
それは農業をするしかなかった事情があったんだと考えるのが自然な気がします。
なぜなら農業はヒトの身体に向いてないため(骨の形を変えてしまうほどの)著しい負担を強いるからです。
それでもやるしかなかった理由はなんだったのか。
五万年前から四万年前に大寒冷期が訪れた。
(中略)
このとき、人類の世界総人口は一万人にまで減ったとも想定されている。page 43
ここにあるんじゃないかと。
世界で人口が一万人、、もはや絶滅危惧種に指定されるレベルの数です。
もともとどのぐらい居たのかもわかりませんが、
とにかく厳しい環境の中、たまたま撒いた種が芽を出したことに気づいたヒトがなんとか農業っぽいことをして生き延びて、世代をつないでゆっくりと広がっていった。
そんな感じだったんじゃないかと思うんです。
つまり『農業』こそがヒトが生き延びるためのギリギリの絶滅回避策だったんじゃないかと。
(あきらめなかったから今がある?)
もちろん証明できるものはありません。完全な想像です。
ですが私もそこそこ生きてきてわかりましたが、現状がうまくいっていればいるほど変化を求めることってしないじゃないですか。
ましてや種まいて芽が出るのが何ヶ月も先なんて、胸に手をあててみるまでもないわけです。(文字どおり芽が出ない可能性だってあるわけだし。。)
だから、外的要因(大寒冷期)があって定住せざるを得ない状況になって農業が奇跡的にうまくいったと考えるのがすごく自然な気がします。
そしてその結果(いいことばかりじゃなく)
食べ物が蓄えられるようになりました(よかった!)
これまで少人数で移動していた集団が大所帯を持つようになりました(まーよかった!)
複雑な社会(階級)が形成され(つらいかも)
果ては領土を奪うための戦争が始まりました。もちろん目的は奴隷の確保と農土の略奪です(キビシイ!)
こう考えると窮余の策で生き延びることができたものの、本来の生活スタイルとまったく異なる生き方をしなくてはいけなくなってしまったんだと思うんです。決して本望ではなかったと。
(声)ワシかてそんなつもりじゃなかったんじゃ。。あとでそんなぁことになるにゃーなんて。。
なんてね。
都市国家の勃興を見るとき、あきらかな疑問が生じる。
選択の余地のなかった奴隷をのぞけば、なぜ大衆は自ら自由を捨て去り、他人のために食糧を生産することに同意したのだろう?
おかげで、他人が自分より自由に生きられるだけだというのに。
なぜ政治家や官僚が豊かな暮らしを楽しむのを許したのだろう?
答えは、間違いなく戦争に対する恐怖にある。page 100
そりゃ誰だって殺されるぐらいならなんだってやります。
だから農業が急速に発展した背景として、目的がある時点で「守ってもらうため」になったのだと著者は推察しています。
とにもかくにも農業がヒトの社会のあらゆることを変えてしまったことは事実のようです。
そしてこの本のテーマである、私たちの身体へもたらした変化についてですが、
歯について述べることは、私たちの進化全般について述べることに一番近いといってもいいほどだ。
歯は私たちと私たちの祖先やほかの哺乳類とのつながりを教えてくれるし、歯の摩耗やひび割れは文化と環境を物語る。page70
(歯は硬いので化石として見つかりやすいこともあり、貴重な情報源です。)
ヒト族たちのあごと口が小さくなるにつれて何かがうまくいかなくなったようだ。
農耕がはじまるまでは、不正咬合や転位のあるホモ・サピエンスは見られない。
その後、農耕がすっかり定着した頃に、歯が頭のなかに収まり切らなくなったらしい。
(中略)
虫歯についても同じことが言える。農耕がはじまる前、化石記録に虫歯が見られる割合は非常に低かった。page 72, 73
食べ物が穀物中心へとなるにつれ
噛むことが減ったのであごを小さくして、
ついでに歯自体も小さくしちゃって(象牙質部分を減少させて!)
歯の本数も減らして、
あごの中に収める試みをしてきました。
(もはや美容整形のレベルじゃない!)
でも、身体はこの急激な変化についていけるわけもなく、
親知らずのような埋伏歯(まいふくし)や不正咬合が生じてしまっているのだと著者は指摘します。ふむふむ。
また、虫歯が増えた理由については、
問題は、ジャングルで人骨をすぐに腐食させてしまう酸性土壌と同じく、ヒトの口内もどんな種類の糖を食べても同様の環境になることにある。 page 79
穀物は炭水化物なので、糖類とデンプンを含みます。
そしてこれらが口内の環境を酸性の状態にしてしまうということらしいです。
また、口内に存在するミュータンス菌も農耕がはじまった頃から進化し
「糖の代謝と耐酸性」にかかわる遺伝子を持つようになったのだ。page 80
もはや口内では、怖いものなしの存在へと。
こうして私たちの歯はつねに
「酸性」と「虫歯菌」
の危険性に晒されてしまっているというわけです。
こうなると抗うこともやめたくなります。。
長くなりました。はい。
最後に、農耕と同じ時期にはじまった家畜についての興味深いお話を紹介して終わりにしたいと思います。
動物の家畜化にともなって乳への依存度が上がったのは、人体にきわめて最近の進化だ。
(中略)
当時、成人は乳を飲むことができなかった。初期人類は乳幼児期をすぎると乳糖の消化能力を失った。
離乳後は、進化上その能力が必要なかったからだ。page 92
よく牛乳を飲んでお腹を壊す人がいますが、進化のスピードで考えるとそっちの方が自然なのかもしれませんね。
食べ物と健康(と食品業界)について興味がある方は、こちらをオススメします。
Netflix「健康って何?」※予告編には字幕はありません。
こちらもかなりショッキングな内容を含んでいますが、QOLに役立つコンテンツだと思います。
さ、次回は第三部です!
第三部 西暦1700年〜西暦1910年
第6章 腰が痛い!
第7章 大気汚染