『サピエンス異変』を読んで〈第4部〉
第四部 西暦1910年〜現在
第8章 身体は現代の食生活に追いついていない
やっと、現在まで来ました。
紀元前800万年前から始まっていますので、なんとも感慨深い。。
(最初から読みたい方はこちらから)
まずこの章の始まりからして、興味を掻き立てられます。
「動かなくなった人類に何が起きているのか?」
動かなくなった人類に何が起きているのか。
ここで思い出していただきたいのが
なぜ虫歯や不正咬合が人類共通の問題になったのか
(第二部でこのことについて触れています。)
環境の変化についていけないから、問題が生じているわけです。
(個人の規律とかではないということです。)
そもそもヒトの身体がほかの霊長類と大きく違うのは
・脊椎がS字型
・足がアーチ状
です。これらは長距離を移動するために進化したもので、ほかの霊長類にはない特徴です。
(詳しくは第一部で。)
動かなくて済むような生活を私たち自身がつくり出しているものの、身体にとって望ましい環境になったわけではありません。
そして、現代ならではの働き方ですが
デスクワークが私たちの身体をどう変えたのか?
について
長時間座っていると血流が妨げられて、筋肉から代謝廃棄物を流し出せなくなる。page 197
クッションに2時間腰掛けるたびに、血流が減って血糖値が下がり、糖尿病や肥満や心臓病のリスクファクターとなる。page204
と指摘しています。また、
アメリカではここ40年で、2型糖尿病(座っていることと強い相関がある)の患者数が、400万人以下から、人口の10%に近い2000万人を優に超える数にまで増えている。page204
糖尿病患者がものすごい勢いで増えている現実にも触れています。
もちろん長時間座ることだけが糖尿病になる理由ではありませんが、相関関係は無視できません。
ちなみに上の血液の流れへの影響をフローにしますと
長時間座る
→ 血流が減る
→ 血糖値※が下がる
→ ホルモンバランス悪化
→ 慢性病リスク
※血糖値 … 血液内のグルコース(エネルギーになる糖)の濃度のこと
ということになります。著者も指摘していますが
長時間座っているのはただ運動していないということだと広く誤解されているが、実際はまったく別物である。page 205
長時間座る ≠ 運動していない
(上記はイコールではありません。)
長時間座る = 血行不良、背骨や筋肉への負担
が正しい等式になります。
だから、長い間座るのはよくない
言うのは簡単ですが、現実にはすごくむずかしい。
それでも、『雲・雨・傘』ぐらいのフレームとして理解しておく必要があるんだろうなと思います。
そして、長時間座ることによる筋肉や骨への影響について
長時間座っていると、脊柱が変形し、それにともなって筋肉のバランスが崩れることが多い。page 199
いつもハイヒールを履いている女性がローヒールに変えようとするとかなり苦労するのに似ている。
ハイヒールを履いているときには足首の角度は180度に近いが、ローヒールでは直角になる。
ローヒールをうまく履きこなせないのは、ふくらはぎの筋肉が適応して短くなり、本来の位置まで楽に伸ばせなくなっているからだ。page 199
この辺りはかなり詳しく紹介されていますが「大腰筋」や「腸骨筋」は、私には説明できず申し訳ありません。
とにもかくにも、長く座っていると血行にも肉体にもよくないぞ、という話ですね。
(結論だけ書くと稚拙に聞こえますが。。)
余談ですが、人の足のサイズが大きくなっている理由が、人類の足が総じて扁平足になっているということもあるそうです。
(アメリカでは5割の人の足が扁平足!? page220)
へんペーそくって、なんかとぼけた語感もあって他人事のように思いたいけど
歩くときに足の親指って使わないですよね。
これって、そーゆーことなんです。
私たち全員扁平足になっていてもおかしくないわけなんです。
ちなみに私はこの本を読んでから足の親指を意識して歩くようになり、ふくらはぎの痛みが劇的に改善しました。
(それまでは毎日、娘にお願いして踏んでもらってました。お小遣いつきで。。)
ざっと著者が説明している身体への影響を書くとこんな感じですが、大切なのは
身体にとって何が自然なのか(農耕以前はどうだったのか)ではないかと。
私たちの身体的特徴は草原で生活していた時と大きく変わっていないということです。
最後は、
食生活についての話で終わりたいと思います。
2025年には27億人が肥満に
衝撃的な見出しですが、これほどに肥満が世界的な問題になっているということです。
繰り返しになりますが、慢性病は個人の問題ではないと考えないと前に進めないと思っています。
肥満はいくつもの原因がある複雑な病気だが、「解決しようのない」原因は一つもないと、20世紀半ばには受け止められていた。
だがいまでは、遺伝的、出生前、生物学的、心理学的なさまざまな影響が原因となっていることが知られている
(本人はそのうちのせいぜい一部しかコントロールできない)page236
腸のなかに棲んでいる微生物叢(びせいぶつそう)が、肥満や精神疾患に関係していることも最近の研究でわかってきています。
こうなってくると本人の意思なんて関係ないとさえ思います。。
だからと言って最後に責任を持つのは本人なので、人任せにはできるわけでもありません。
社会全体として、健康に向かうような仕組みつくりがもっと必要なんだろうな、と感じる今日この頃です。
さ、次回はいよいよ第五部(最終章)です!
第五部 未来
第9章 超人類への扉を開ける「手」