『サピエンス異変』を読んで〈第5部〉
第五部 未来
第9章 超人類への扉を開ける「手」
やっと、最終章です。800万年前からはじまって、現代、そして未来です。
(最初から読みたい方はこちらから)
最後を締めくくるのにぴったりのテーマ
手
私たちの「手」がどのような進化してきたのか
手の進化を読み解くことで、わかったことはあるのか?
を最後に、このブックレビューを終わりにしたいと思います。
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私たちの手は、言ってみればなんでも屋です。
モノを掴むことはもちろんのこと、何かをつまんだり、指先で軽く押してみたり、スマホ画面をスワイプしてみたり、はたまた粘土から茶碗をつくることも、絵を描くことも、すべて同じ「手」で行うことができます。
(当たり前と言えば当たり前の話ですが、これができる動物はヒトだけです。)
一体いつから、こんなに器用になったのか
せっかくなので選択肢を用意してみました。
1 農耕が始まった3万年ぐらい前から
2 産業革命があった1760年代ぐらいから
3 現代になってから(とくにスマホの登場から)
4 よくわかってない
答えは、4。わかっていません。
これは第1部のレビューにも書きましたが、ヒトが死者を埋葬するようになったのはここ10万年ぐらいです。
それ以前の化石はフルセットで見つかることがほぼないため、
例えるなら、草むらで見つかったアイアンクラブ1本からその時のプレーの状態やスコアの仮説を立てているわけですが
見つかった化石などからは、手に進化(変化)の形跡は見られません。
なので少なくても数十万年変わることなく、この形を維持していることになります。
人間の手が変化してこなかったのは、変化させようとする進化圧が掛からず、現状のままで今のところは完璧だからだ。page 286
期待していたものと違って残念に感じたかもしれません。
ちなみに他の霊長類との比較ですが
ざっくり、全霊長類の特徴を足して割ったみたいな感じになっています。(本書では12の霊長類と比較したスケッチが紹介されています)
優れているところも、劣っているところもありません。
最も特徴のあるアイアイの手は、中指が細長くなっていて、木の中に隠れている虫を掻き出しやすい形になっています。
そこまでの特徴は別としても、ヒトの手の形と器用さに相関関係はないことになります。
私たち人間は、自分たちの手がすべての哺乳類の中でもっともすぐれていると信じたがるものだが、そんな内なる虚栄心を二人※は痛烈に攻撃した。page 285
ヒトの手は器用だからできることが多いのではなく
手はしなければならないことがないために、逆にいろんなことができるようになっている
すごくヒトっぽい器官とも言えます。
(最後の章なのに、こんな乱暴にまとめていいのだろうか。。)
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まとめ
本書を通じてヒトの身体がどのように環境に適応してきたのか(できていないのか)、また、なぜ私たちの身体がこのような形をしているのかについて多くを知ることができました。
これは前に書きましたが、多くの人が抱えている問題(腰痛や虫歯、さまざまな生活習慣病)の責任は個人にあるのではなく、
人類が発生の原因に真に向き合っていないために抱えてしまっている業(ごう)のように考えるようになりました。
そして今起きている環境や社会の変化、
行動、食料、働き方、IT と Bio の融合、、
これらが私たちの身体へ与える影響について考える時
ある意味、判断軸に身体を置いて考えることが大切なんだろうと感じます。
感覚をしっかり認識できるような心と体を持たなくてはと。
また、本書を読み進めていた時、カール・セーガンの「コンタクト」や、ジェームズ・P・ホーガンの「星を継ぐもの」をよく思い出しました。
どちらも宇宙人と遭遇する物語で、ある意味ま逆のジャンルなのですが。
ただ、きっと過去を辿るのも未来を想像するのも、同じ想像力であることに感心したことで繋がったのかもしれません。
そして、わからないことが多く残されていることにも静かに感動を覚えました。
私のつたない文章力では伝えられないところが多くあります。なので、もし興味を持たれたら、ぜひ手に取っていただければと思います。
やっとこのブックレビューを終えられましたので、次回はライトにいきたいと思います(笑)